10周年に寄せて

    僕が関西大学総合情報学部に着任したのは2008年9月であった.今年でちょうど10年になる. 体感的には着任してからまだ3,4年くらいしか経っていないように感じるのだが,時間の経過というのはかくも早いものかと愕然とする.

    前職は企業の基礎研究所の研究員であったため,着任した当初は研究の進め方に大きく戸惑った.自分一人で進めるのであれば,研究の進捗も論文の質もその管理は自らの責任であるし,それゆえ自らの努力で改善が見込まれる.しかし,大学でゼミの学生と研究を進める場合はその考え方は通用しない.まず学生のモティベーションに働きかけ,研究の進め方や論文執筆の作法,プレゼンテーション作成のノウハウに至るまで一つずつ指導していかなければいけない.これがなかなか一筋縄ではいかない.歯痒さを感じたり,自らの力量不足を悔いたりすることもしばしばである.10年経った現在でも,自分は大学教員に向いていないのではないかと年に2,3度は自問する羽目に陥る.

    とはいえ,悪いことばかりでもない.学生が僕の期待以上に成長し,目覚しい成果をあげることも決して少なくない.「英語が苦手だ」ということばが口癖だった学生が,奮起して英語論文を執筆し,国際会議で見事な発表を行ってくれたこともある.こうした学生の成長を目の当たりにしたときなどは,教員をやっていてよかった,と心底感じる.

    学生の指導は一筋縄ではいかない.昨年うまくいった方法が,今年は全く機能しないといったことはざらである。だから,日々,指導方法を見直し,常にその時点での最良の指導方法を模索しなくてはならない.この10年はそんな試行錯誤の連続だった.「未来ソウゾウ展」は,その10年間の軌跡がたどり着いた一つの場所である.そして,さらなる10年のスタートラインでもある.

    松下 光範